「専門性を高めるために症例数の多い大型病院で働きたい」、「看護業務を総合的に勉強したいので一般・公立病院を希望している」、「育児の関係上、日勤のみのクリニックじゃないと仕事を続けるのが難しい」、「数年のブランクがあるので、復職後のサポート体制が整った病院を探している」など、看護師の皆さんが新しい職場に求める条件はキャリアプランやライフスタイルによってさまざまです。
そのほか、訪問看護ステーション、介護施設、ツアーナースなど看護師の資格を活かして新しい分野にチャレンジをしてみたい方、あるいは先の東日本大震災を目の当たりにして災害支援ナースの知識・技術習得に関心をお持ちになられた方も少なくないと思われます。
東北6県のなかで最も人口が多い宮城県は医療機関の数でも他県を圧倒しており、東北大学病院(仙台市青葉区)、東北労災病院(同)、県立がんセンター(名取市)、県立循環器・呼吸器病センター(栗原市)をはじめとする153の病院と1571もの診療所が存在しています。病院の過半数(83施設)は仙台市にあり、自治体病院、東北大学医局の関連病院が多いのが特徴です。
宮城県で働く看護師数(正看のみ)は約12,000人で、人口10万人あたりの比率では全国平均の約1,000人を下回る約850人となっています。県下全域で人手不足になっているのではなく、仙台医療圏に偏在している傾向にあります。現在は二次医療圏単位、あるいはより広域な単位で医療サービスを提供できるように病院間の再編・ネットワーク化が進められていますが、震災等の影響もありこの偏在傾向はしばらく続くものと思われます。
平均月収は上のグラフが示す通り全国平均よりも約2万円低い30万円となっていますが、年間賞与・その他特別給与額では全国平均の78.6万を上回る80.3万円となっています。
平均勤続年数は全国的に見ても高い9.4年となっています。ただし2011年度の離職率を見ていると、全国平均の10.9%に対して10.5%とほぼ同じ数字ですので、結婚や出産後も働き続けられる体制が整った医療機関が他の地域よりも多いとは言いかねます。
有効求人倍率は約3倍と売り手市場が続く看護師ですが、必ずしも引く手あまたという訳ではありません。というのも、医療機関側は病棟勤務(夜勤を含む)の経験が豊富な看護師を即戦力として求める傾向にある一方で、看護師側は外来での日勤業務(クリニックを含む)を希望する方が多く、双方の間にギャップが生じているためです。
希望の職場を見つけるためには、「お給料は○×万円以上で、有給消化率が高くて、学会参加への補助があってetc…」と何もかも優先するのではなく、自分のキャリアの「棚卸し」をしっかりと行い、「コレだけは譲れない!」という条件に絞って情報収集を行うとよいでしょう。
看護師の皆さんが新しい職場を探そうとする場合、その理由は新人・中堅・ベテランによって異なりますが、将来の「キャリアプラン」重視型と、現在の「ライフスタイル」重視型の2つタイプに大別されます。
「キャリアプラン」を優先したい方の場合、例えば「がん看護の分野におけるエキスパートを目指しているので、現在の職場よりも症例が多く、勉強会も豊富な大学病院で働きたい(スペシャリスト志向)」、あるいは「幅広い領域の疾患に対する看護を経験したいので、病棟業務が細分化されていない中規模の民間病院で働きたい(ジェネラリスト志向)」といった、5年〜10年先にあるご自身の「理想の看護師像」見据えたうえで、転職を行うというタイプです。
一方、「働きながら大学に進学したい」、「子供が小さいのでフルタイム勤務は難しい」、「プライベートも充実させたい」など、「ライフスタイル」を優先する(優先せざるを得ない)場合、日勤のみで定時に業務終了&土日は休みとなる「外来診療クリニック」、「健診センター」、週2回程度、夜勤業務だけを担当し、他の日は自由に使える「夜勤専従」、平日の昼間勤務で自宅周辺が訪問先となることが多い「訪問看護ステーション」などが有力な選択肢となります。
また「妊娠・出産を機に常勤→非常勤→休職」となり、数年間のブランクがあるものの、「子供が大きくなったので、もう一度看護師として働きたい!」と復職をご希望のママさん看護師も非常に多くいらっしゃいます。
全国的な看護師不足を補うため、各自治体・医療機関では、資格を持ちながらも現在は働いていない「潜在看護師」の復職を支援するためのセミナー等を開催していますので、ブランクが不安な方でも再チャレンジできる環境が整ってきています。
その他では、看護師としての専門性やコミュニケーション能力が求められるフィールドが年々拡大されているのを受け、治験関連企業における「治験コーディネーター(CRC)」や「臨床開発モニター(CRA)」、学会や病院で自社の医薬品・医療機器の説明・症例紹介、営業補助などを行う「クリニカルスペシャリスト」、国内外の団体旅行やイベントに同行し、健康管理を行う「ツアーナース」など、医療機関ではなく民間企業にキャリアチェンジする方も増えてきています。